
注文住宅の総額は「本体工事」「付帯工事」「諸費用」の3つに分かれ、本体価格は総額の7割程度にすぎません。下関特有の地盤改良・擁壁・浄化槽・塩害対策まで含めて、見積もりで確認すべき項目を整理します。
住宅会社の広告に出てくる「本体価格」は、家を建てる総額ではありません。総額は大きく3つに分かれ、一般に本体工事が約7割、付帯工事が約2割、諸費用が約1割と言われます。この記事では、それぞれに何が入るのかと、下関で特に見落としやすい項目を書き出します。
全国の平均額から見る「総額」の感覚
住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」(2023年度)では、注文住宅の建設費の全国平均は約3,860万円、土地付き注文住宅(土地+建物)は約4,900万円でした。これは建物の本体と付帯工事を含んだ建設費で、諸費用は含まれていません。地方は全国平均より低い傾向がありますが、資材・人件費の上昇で、ここ数年は年々上がっています。
1. 本体工事費(総額の約7割)
建物そのものを建てる費用です。基礎、構造、屋根、外壁、内装、建具、標準の設備(キッチン・浴室・トイレ・給湯器)、電気・給排水の屋内配管が含まれます。
確認したいこと
- 「坪単価」の計算に使う面積が、延床面積か施工面積(バルコニーや玄関ポーチを含む)か。施工面積で割ると坪単価は安く見えます。
- 標準仕様の範囲。床材、窓、断熱材、給湯器のグレードがどこまで含まれているか。
- 2025年4月から、すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務化されました。断熱等級4・一次エネルギー消費量等級4が最低ラインで、これを下回る見積もりは今はありえません。等級5以上(ZEH水準)にする場合の差額は、補助金と住宅ローン控除の枠で回収できる場合があります。
2. 付帯工事費(総額の約2割)
建物の外側や、土地の条件によって発生する工事です。土地によって金額が大きく変わるため、最初の概算見積もりには「別途」と書かれていることが多い項目です。
| 項目 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 解体工事 | 古家付きの土地を買った場合 | 木造30坪で150万〜250万円程度 |
| 造成・外構 | 整地、駐車場、フェンス、門、植栽 | 100万〜300万円程度 |
| 地盤調査・地盤改良 | 調査は必ず行う。結果によって改良が必要 | 調査5万〜10万円、改良は50万〜200万円程度 |
| 給排水・ガスの引き込み | 前面道路から敷地への引き込み | 30万〜100万円程度 |
| 浄化槽 | 公共下水道がない地域 | 80万〜150万円程度(自治体の補助がある場合あり) |
| 擁壁 | 高低差のある土地 | 数十万〜数百万円。古い擁壁のやり直しは特に高い |
| 屋外電気・空調 | エアコン、照明、カーテン、アンテナ | 50万〜150万円程度 |
| 仮設工事 | 仮設トイレ、電気、水道、足場 | 本体に含まれる会社と別途の会社がある |
目安の金額は一般的な幅で、土地の条件と仕様で大きく変わります。見積もりを比べるときは、付帯工事が含まれているか、含まれていない場合はどの項目が「別途」かを必ず確認してください。
下関で特に多い付帯工事
- 地盤改良:海沿いの埋立地(彦島、長府の港湾周辺、新港地区など)や、谷を埋めた造成地では、地盤改良が必要になる割合が高くなります。改良の工法(表層改良、柱状改良、鋼管杭)で費用が大きく違います。
- 擁壁:坂の多い長府、彦島、関門海峡沿いの斜面地では、擁壁のある土地が多く、古い擁壁は建築確認の際に安全性の証明を求められることがあります。
- 浄化槽:豊浦・菊川・豊田・豊北地区の一部では公共下水道が整備されていません。市の浄化槽設置補助の有無も確認してください。
- 塩害対策:海岸から近い土地では、外壁材・金物・エアコンの室外機を耐塩害仕様にする必要があり、その分の差額が出ます。
3. 諸費用(総額の約1割)
工事以外にかかるお金です。現金で払うものが多いので、自己資金の計画に直結します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設計料・建築確認申請費 | 建築家と建てる場合は設計料が別建てになることが多い |
| 登記費用 | 土地の所有権移転、建物の表題・保存登記、抵当権設定。登録免許税+司法書士・土地家屋調査士の報酬 |
| 住宅ローン関連 | 事務手数料、保証料、印紙税、火災保険・地震保険、団体信用生命保険 |
| 税金 | 不動産取得税(軽減あり)、固定資産税の精算、印紙税 |
| 仲介手数料 | 土地を仲介で買った場合、価格の3%+6万円+消費税が上限 |
| 引っ越し・家具・家電 | 新居に合わせて買い替えるものが意外と多い |
| 地鎮祭・上棟式 | 行う場合。数万〜10万円程度 |
| つなぎ融資の利息 | 土地代や着工金を住宅ローン実行前に払う場合に発生 |
見積もりを比べるときの4つのルール
- 総額で比べる。 本体価格が安くても、付帯工事と諸費用を足すと逆転することは珍しくありません。
- 「別途」「概算」「一式」の項目を全部書き出す。 特に地盤改良と外構は、金額が決まる時期が遅いので、上限の目安を聞いておきます。
- 性能を同じ条件にそろえる。 断熱等級、耐震等級、窓の仕様が違えば、価格が違って当然です。
- 補助金と税の優遇を差し引いた「実質の負担額」で考える。 下関市の住宅取得支援事業(最大250万円)や国のみらいエコ住宅2026(最大110万円)は、性能と手続きの順番次第で使えます。
まとめ
- 総額=本体工事(約7割)+付帯工事(約2割)+諸費用(約1割)
- 下関では、地盤改良・擁壁・浄化槽・塩害対策が「別途」になりやすい
- 比較は総額、同じ性能条件、補助金込みの実質負担額で行う
「いくらの家が建つか」ではなく「全部でいくら必要か」を最初に押さえることが、資金計画の出発点です。
出典・参考
情報の確認日:2026-10-11。制度の内容・金額・受付状況は変わることがあります。申請前に必ず各窓口の最新情報をご確認ください。


